全層釣法・全遊動のコツ
全層釣法、全遊動、沈め釣り、どれもそうですが、目で見えない部分がたくさんあります。
例えば、水深や上潮の滑り、潮の速さはパッとは見えません。どのような形で仕掛けが沈んでいるのかも見えません。おまけに全層釣法にあってはウキすら見えません。
海の様子はパッと見では分かりませんから、釣りを通して把握していくことになります。
上手に釣るためには、まずは海の様子を知ることが欠かせません。海の様子を考慮しつつ、仕掛けを調整し、釣りを組み立ていくことになるからです。
海の状態、仕掛けの状態はいくつかのポイントに注目することで、およそ把握することができます。
今回は海の状態と水中の仕掛けの状態を把握するためのコツを紹介したいと思います。
三つのポイント
そのコツとは、三つのある部分に注目することです。
注目する箇所は以下の三つの部分です。
A:穂先から海面まで垂らした道糸
B:手前から数m先までの海面に触れている道糸
C:回収時の仕掛けの位置
この三箇所を見ておくことで、かなりの情報を得ることができます。
A:穂先から海面まで垂らした道糸
全層釣法ではこの部分を見ながら道糸を送り、仕掛けを入れていきます。
そして、アタリを判断するのも穂先や、海面まで垂らした道糸です。
これがいわゆる「ノの字」と言われる状態です。ただ、私はこの形は「しの字」って感じがするのですが。
仕掛けをなじませるためには道糸を送る必要があります。仕掛けが沈むにつれて、上の道糸の形から「ノの字」に近づいていきます。つまり、道糸が張っていきます。
ある程度まで張ったら、再び「しの字」になるように道糸を送り出します。
仕掛けが着底すれば、道糸は張らなくなります。潮が動いていない時は道糸はそれ以上張りませんが、通常海には流れがあるため、仕掛けが着底しても、流れが仕掛けや道糸を押して動かすことで道糸が張っていきます。
最初の頃は、紛らわしくて着底したのかどうかの判断はつきにくいものです。
厳密には着底前と着底後では道糸の張る速度が異なります。慣れてくると着底後の方が張り方がゆっくりになるので判断がつくようになります。
サシエのオキアミは10秒間で1m沈み、ネリエは2m沈みますので、およその水深が推測できると思います。
そして、アタリを待つわけですが、やはり、この部分の道糸に注目します。
上記の写真のように道糸を垂らしてアタリを待ちます。チヌが食った場合は、垂らした道糸が明確に走ります。
問題は前アタリのときです。慣れてしまえば、道糸の微妙な動きで前アタリの判別ができるようになります。
海面まで垂らした道糸は潮の動きで徐々に張っています。つまり動いているため、その中で魚によって引き起こされた動きを判別することは最初のうちは難しいかもしれません。
「道糸がちょっと動いたように見えたけど、魚かな?潮かな?」と判断が難しいわけです。けれど、見分けのポイントはあります。
潮によって道糸が動いている(張っている)時は、同じリズムで繰り返されているはずです。道糸の張る速度はある程度一定のはずです。
その最中に魚の微妙な反応が道糸に反映されたならば、潮による一定のリズムとは異なる動きが生じます。
例えば、道糸の張り方が一瞬速くなる、道糸がピクンと一瞬動く、道糸が一瞬ピクッと振動する、という風に独特の動きをします。
それらは前アタリですので、何秒も経たないうちに道糸が思いっきり走るかもしれません。本アタリに備える合図です。
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B:手前から数m先までの海面に触れている道糸
遠投したり、ウキを沈めたりしたら、ウキや仕掛けは見えなくなりますが、手前から数m先までの道糸は常に見えていますから、この部分から色々な情報を得ることが可能です。
仕掛けの入り具合や潮の速さ、手前と沖の潮の流れ方、上潮の滑り(二枚潮の有無)、横風がある場合にはその影響の程度を判断することができます。
ポイントは道糸の「入り方」を見ることです。
この時の状況では以下のように道糸が入っています。ウキは50cm程度沈めてあります。
ウキは青で囲った所にありますから、手前の道糸が右側に膨らんでいるのが分かると思います。
手前が右に膨らんでいるということは、ウキまで伸びた道糸全体が右に膨らんでいるのだと想像できます。
底の潮に比べて上潮が速い時に起こりやすい形です。
このように上潮が滑る時の対策は色々ありますが、今回は道糸を沈める方法を考えてみます。
道糸を上滑りしている潮の下に沈める方法です。
では上潮の厚さはどの程度でしょうか。
この時のウキは50cm沈めており、その深さにあるウキは上潮の影響は受けていません。
ならば道糸も同様に50cm程度沈めれば良いという話になります。
もしどの程度道糸を沈めればよいか分からない時は、とりあえず滑らない深さまで沈めると良いと思います。
やはり、大切なことは「道糸の入り方」になります。
道糸がどのような角度で入っているのかに注目します。
上の写真で言えば、この時は赤色のように道糸が入っていましたが、緑色のように道糸が入っていればとてもよい状態です。
できるだけ緑で示しているように、道糸が入るよう試行錯誤することが釣果に結びつきます。
また、手前の道糸の角度、入り方を見ることで、現在ウキがどの辺を流れているのかの判断もできます。
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C:回収時の仕掛けの位置
私は水面下にウキを沈めるため、仕掛けを流している最中にウキの位置を確認することはできません。沈め釣りをしている人も同様です。
仕掛けがどの辺まで流れているのかを判断する確実な方法は、仕掛け回収時にどこから仕掛けが上がってくるかを見ることです。
それにより、潮の速さ(=ウキを沈めている場合は、厳密には底潮の速さ)と流れの向きを知ることができます。
最初に示した写真では青で囲った位置にウキがあります。つまり、青で囲った位置から仕掛けが回収されたということを意味します。
それに対して道糸はすでに触れたように右側に膨らんでいます。
潮は殆ど動かず、右側に膨らんだ道糸が仕掛けを右側に引っ張っていたのだと想像できます。
フカセ釣りにおいては同調ができていないという点で大きな問題だと気づくことができます。