全層釣法・全遊動では重い仕掛けも使う
全層釣法について先行するイメージは、ウキ止めを付けず、軽い仕掛けを使うというものです。
これは正しいものだと思います。
ただ、「軽い仕掛け」という部分が、若干強調されすぎている気がしないでもありません。人によっては、この部分が誤解と混乱をもたらすかもしれません。
少なくともチヌ釣りでは、実際には状況に応じてガン玉を打ち、重い仕掛けを使うのが現状です。
例えば、00などのウキにG3(ジンタンの3号)を三個打つこともあります。合計の重量は0.75gになり、2Bと同じ重さになります。
G1を三個打てば、4Bと同じ重さになります。もっとも、G1を三つ打つ状況はあまりないのですが。
水深や潮の速さ、風の強さ、狙うタナ、遠投距離に応じてガン玉を追加していきます。その結果、半遊動と変わらないぐらい重い仕掛けを使っていることも多いものです。
全層釣法・全遊動でも底に的を絞ることもある
全層・全遊動では軽い仕掛けで表層から中層、底層までの全層を狙うことが特徴になります。
底にいるチヌだけでなく浮いたチヌも狙うという理屈ですが、そのためには前提条件としてチヌが浮いている必要があります。
チヌが浮いていないのに、軽い仕掛けで表層、中層を探っても意味がないからです。
チヌが浮きにくい厳寒期、活性の低い日には全層を狙うメリットはなくなります。このような状況ではチヌは底にいます。ゆっくりと仕掛けを落とすことは着底までの時間がかかるため、非効率的になります。
こういう時には表層や中層を捨てて、底狙いに的を絞ることも実は多いのです。
例えば水深が7mあるとしましょう。2月のもっとも水温の低下した時期です。様子を見たものの、やはりチヌが浮いている感じがない。そのような場合、私は即座に底狙いに切り替えます。
00のウキを使っているとしたら、落としナマリにG3を一個打つかもしれませんし、落としナマリに加えて口ナマリにG5かG3あたりを一個打つかもしれません。あるいは口ナマリを打たず、落としナマリにG1を打つかもしれません。
激流でなければ、着底までは35秒前後でしょうか。
これぐらいの重量の仕掛けであれば、半遊動と比べても、着底までの時間のロスはあまりないと思います。
仕掛けを重くした今、全層を狙うという全遊動のメリットはかき消されました。
しかし、ウキ止めがないことによる食い込みの良さ、ハリスの這わせ幅を自在に調整できること、ウキ交換をしなくてもガン玉の打ち方だけで素早く幅広く対応できることなど、全遊動のメリットは依然残り続けます。
つまり、重い仕掛けであっても、半遊動にはない全遊動特有のメリットはあるということです。
全遊動と半遊動、使い分けは必要か?
私は使い分けていません。どんな釣り場でも状況でも、全層釣法を貫いています。
使い分けたい人は使い分けたらよいと思います。ここは個人の趣味です。
ウキの号数、道糸処理、ガン玉による仕掛けの調整、投入点の工夫などにより、どのような状況でも全遊動の強みを活かしつつ、釣りをすることが可能だと実感しています。
また、半遊動ほどではありませんが、道糸の出を止めることで、短時間であればサシエのタナを固定させることもできます。
道糸を張ると仕掛けが手前に寄ってくるので、もちろん限界はあります。この点、つまり一定のタナに正確にサシエをキープするという点は、半遊動が優れています。
全遊動と半遊動、それぞれに得意不得意があり、それを理解した上での運用であれば、使い分けようが使い分けまいが、とくにどちらでもかまわないのだと感じます。
よくあるのは、全遊動と半遊動のメリット・デメリット、両者の違いに注目する解説サイトが多いように思います。
せっかくなので一つ付け加えたいのは、違いだけではなく重複する部分も考慮することの大切さです。
これは極端な言い方になりますが、全遊動と半遊動という区別すら必要ないとも思うほどです(もちろん、言葉と分類は大変便利なものですから、全遊動と半遊動という用語によって、私たちはそれが何であるのかを理解できるので、実際には区別は必要なのですが・・・)。
一方で、区別するからこそ、それらがまったくの別物であるかのような錯覚をしてしまうこともあると思います。
しかしながら、グレーゾーンというか、重複する部分、類似する部分もあるのではないでしょうか。
その両者の区別は、ある部分においては曖昧にもなります。
半遊動だって、0や00のウキを使い軽い仕掛けでーそれは、ウキ止めがあるという点を除いて、ほとんど全遊動のようなーウキ止めまでの全層を狙うこともできるのですから。